「趣味は読書くらいしかない」「特技と呼べるほど得意なことがない」。エントリーシートの趣味・特技欄で手が止まる人は少なくありません。映画やゲームを書いていいのかも、判断がつきにくいところです。
ESに書く趣味・特技は、珍しいものである必要も、大会実績や資格がある必要もありません。読書、映画、旅行、料理、ゲームのような身近な題材でも、何が好きで、普段どう楽しんでいるかを少し具体的にするだけで、その人らしさは伝わります。
「趣味は旅行です」だけでは人柄が見えません。「移動手段と宿だけ先に決めて、現地では予定を詰めずに市場や個人店を歩くのが好きです」と書けば、同じ旅行でも本人の回答になります。見られているのは題材の種類ではなく、そこに具体性があるかどうかです。
この記事では、書く題材の選び方、伝わる書き方の型、10ジャンルの例文、避けたい題材、面接で深掘りされたときの答え方までを扱います。自分に近い例文から探してみてください。
趣味・特技欄は、書いた時点で面接の質問になる
面接で最初に開かれるのは、この欄です。志望動機から入ると場が固くなるため、面接官はまず軽い話題に触れることがあります。そのとき手元にあるのが、最後の5分で埋めた欄です。
質問は1回では終わらない
趣味・特技欄に書いた言葉は、そこで完結しません。面接官は書いてあることをたどって、続けて聞いていきます。
図1:書いた言葉は3手先まで質問になる。止まるのは3手目だけ
ほかの題材でも、たどり方は変わりません。
止まるのは3手目です。1手目と2手目は事実を答えるだけなので、書いた時点で用意ができています。3手目だけは「なぜ」を聞かれるので、その場で考えることになります。
ここで詰まると、面接官は話題を変えます。会話の入口として置かれた欄が、そのまま閉じます。
「3手目まで答えられるか」を基準にする
3手目まで答えられる題材をひとつ持っておくだけで、この欄は会話の入口として働きます。趣味の珍しさも、続けた年数も、そこまで関係ありません。
「週2回のランニング」と書いた人が、「なぜ続いているのですか」に「走っている間だけ何も考えなくていいからです」と答えれば、そこから話が続きます。同じ欄に「フルマラソン完走」とだけ書いてあって、なぜ走るのかを答えられなければ、記録の話で終わります。
この基準は「書いていいか分からない」にも効く
趣味・特技欄で本当に困っている人の多くは、趣味がないわけではありません。趣味はあるけれど、これをESに書いていいのか判断がつかない、という状態です。
3手目の基準は、そこにも使えます。好きなアニメについて「なぜそれを見続けているのか」を自分の言葉で言えるなら、書いて構いません。言えないなら、書いても面接で止まります。判断の基準は、題材の種類ではなく、話せるかどうかにあります。
趣味・特技欄で見られているのは、何を書いたかではなく、書いたことについて話せるかどうかです。
企業が趣味・特技欄で見ているもの、聞けないもの
「趣味・特技欄では人柄を見られている」。ここまでは、多くの記事に書かれています。ただし、その手前に前提がひとつあります。面接官には、聞いていい事柄と、配慮すべき事柄の線引きがあります。
厚生労働省が示している線引き
厚生労働省は、採用選考にあたって配慮すべき事項を3つの区分で示しています。
出典:厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」
POINT
この表で趣味・特技に関係してくるのは(b)です。宗教・支持政党だけでなく、愛読書と尊敬する人物も入っています。就活記事で例文の筆頭に置かれることが多い題材が、企業側が尋ねないよう配慮すべき事項に含まれています。
図2:配慮すべき事項を外していくと、聞けるのは「時間の使い方」と「続け方」になる
ここから分かることが2つあります
① 宗教や政治を書かないほうがいい理由は、印象ではありません。
この2つを避けるよう書いている記事は多くありますが、理由は「印象が悪いから」で止まっています。実際は、企業側が踏み込めない事柄です。厚生労働省は、こうした事項を応募用紙に記載させたり面接で尋ねたりすれば、採用基準にしないつもりでも結果として採否に影響し、就職差別につながるおそれがあるとしています(公正な採用選考の基本)。
つまり、面接官が掘らないのは興味がないからではなく、掘れないからです。書いても質問が返ってこないので、会話はそこで終わります。この欄の価値は3手先まで話が続くことにあります。掘れない題材を置くのは、空欄に近い状態です。
② 「読書」は、思ったより掘られません。
愛読書は(b)に入っています。読書は多くの記事で例文の筆頭に置かれていますが、書名を挙げても、面接官はその先へ進みにくい題材です。
読書を書くなら、書名ではなく読み方に寄せます。「月に何冊」「移動中に読む」「読んだあとに書き出している」といった、行動として答えられる形にすると、線の内側で掘れるようになります。
高校生の応募用紙からは、趣味・特技欄が消えた
この線引きは、書式そのものにも及んでいます。高校生の就職で全国共通に使われる「全国高等学校統一応募用紙」から、趣味・特技欄が削除されました。令和7年度の卒業予定者から適用されています。
出典:厚生労働省「全国高校統一応募用紙の見直しについて」(PDF)
見直しの理由として挙げられているのは、厚生労働省の履歴書様式例の制定を踏まえること、そして選考と直接関係のない個人情報に配慮することです。趣味・特技は、単独の欄ではなく「志望の動機・アピールポイント」欄にまとめて書く形になりました。
大学生のエントリーシートには、趣味・特技欄がまだ残っています。一方で、制度の側は「好きなこと」を書かせる欄から、「適性・能力の説明」に寄せる方向に動いています。
この記事が、題材の種類ではなく頻度・期間・続いている理由を書くよう勧めるのは、そのためです。同じことを書くにしても、適性・能力の説明として読める形にしておけば、書式が変わっても中身は残ります。
線を引いたあとに残るもの
(a)(b)(c)を外していくと、聞けることはかなり絞られます。残るのは、その人が自分の時間を何に使い、どう続けてきたかです。
「人柄」「仕事への向き合い方」「社風との相性」という言い方をされますが、面接官がその場で観測できるのは次の2つに近いところです。
時間の使い方:何に、どのくらいの頻度で時間を割いてきたか
続け方:うまくいかない時期をどう挟んで続けてきたか
どちらも、書いた本人にしか答えられません。だから趣味・特技欄が残っています。
趣味・特技欄で見られているのは、何が好きかではなく、その好きなことにどう時間を使ってきたかです。
趣味・特技欄に入れる4つの要素
面接官が観測できるのは「時間の使い方」と「続け方」の2つに近い、とここまでで整理しました。これを欄に落とすと、入れる要素は4つになります。
①と②が事実、③と④が中身です。①②だけでも、この欄は成立します。「読書」とだけ書くのと、「通学の電車で週1冊、2年続けています」と書くのとでは、後者のほうが会話が始まります。足したのは頻度と期間だけです。
落とす順番と、準備の順番は違う
ここが分かれ目です。書く欄が小さくても、③は用意しておきます。
③は、ここまで見てきた「3手目」にあたります。面接官が「なぜ続けているのですか」と聞いてくるのはこの部分なので、欄に書けなくても、口では答えられる状態にしておく必要があります。
書く優先順位:① → ② → ③ → ④(後ろから落とす)
答えられるようにしておく順位:③ → ① → ② → ④
図3:書く順番と、答えられるようにしておく順番は違う
③を書かずに用意だけしておくと、面接官に質問の余地を残せます。全部書ききってしまうと、逆に聞くことがなくなります。
趣味と特技は、同じ題材で書き分けられる
「趣味と特技に同じことを書いていいか」は、この欄でいちばん多い迷いです。書けます。分けるのは題材ではなく、切り口です。
料理を例にすると、こうなります。
趣味として:週に3回ほど自炊をしています。一人暮らしを始めた2年前からで、同じ材料でどこまで違うものを作れるかを考えるのが面白くて続いています。
特技として:冷蔵庫にある材料だけで献立を組み立てられます。週3回の自炊を2年続けるうちに、買い足さずに作る形が身につきました。
同じ2年間の自炊から、両方書けます。趣味は「続けたこと」、特技は「その結果できるようになったこと」です。
特技に書けるものが思いつかない場合は、趣味の②と③から逆算します。2年続けていて、続いている理由が言えるなら、その過程で身についたことが必ずあります。
欄の大きさ別に、どこまで書くか
ESの趣味・特技欄は、1行のものから200字前後のものまで幅があります。入れる要素を増やすのではなく、後ろから落として合わせます。
30〜50字のときも、②の頻度・期間だけは残します。ここが消えると「読書」とだけ書いた状態に戻り、会話が始まりません。
📚 もっと詳しく
ES(エントリーシート)の書き方|通過率が上がる5つのコツと例文 →
欄の大きさに合わせて削るのは④からで、③は書かなくても答えられるようにしておきます。これだけ決めておけば、企業ごとに書き直す必要はありません。
趣味・特技の例文10ジャンル
例文をそのまま提出すると、面接で困ります。書いた本人しか、なぜ続けているかを答えられないからです。ここに並べたものは、自分の題材に置き換える骨格として使ってください。
どの例文にも、①題材/②頻度・期間/③続いている理由 が入っています。文字数は80〜130字程度です。
読書映画・ドラマ音楽・ライブ旅行料理スポーツ・筋トレゲーム写真・動画語学・勉強PC・ものづくり
読書
映画・ドラマ
音楽・ライブ
旅行
料理
スポーツ・筋トレ
ゲーム
写真・動画
語学・勉強
PC・ものづくり
同じ題材を「特技」として書き直す
趣味として書いたことは、切り口を変えれば特技にもなります。題材は同じで、文の終わり方だけが変わります。
どれも新しい経験を足していません。趣味として書いたことの「その結果できるようになったこと」を取り出しただけです。
例文を選ぶ基準は、自分の趣味に近いものではなく、続いている理由の書き方が自分にも当てはまるものです。
思いつかないときは、記憶ではなく記録を見る
趣味・特技が思いつかないとき、多くの記事は「熱中したことを思い出してみましょう」と書いています。とはいえ、思い出せないから調べているので、その順番だと最初の一歩が踏み出せません。
順番を入れ替えます。思い出すのではなく、すでに残っている記録を見ます。続けていることは、頭の中ではなく行動の跡に残っています。
記録から探す5つの入口
①〜④は自分の記録、⑤だけ他人からの見え方です。特技が思いつかない場合は、⑤から見たほうが早く出ます。自分では当たり前にやっていることほど、自覚が薄いためです。
この5つが役に立つのは、記録が「続いていること」を勝手に残しているからです。②(頻度・期間)が、履歴の中にそのまま入っています。思い出す作業をしなくても、日付と回数が先に手に入ります。
「趣味と呼んでいいか」の目安
記録を見ると候補は出てきますが、次に「これを趣味と書いていいのか」で止まります。公式な基準はありません。この記事では、②が書ける最低ラインとして、次を目安にしています。
月に1回以上・半年以上続いている → 趣味として書けます
週に1回以上・1年以上続いている → 特技の材料になります
どちらも満たさない → ⑤(人から任されること)を優先します
回数が少なくても、途切れずに続いていれば書けます。逆に、期間が短いものを無理に書くと、②が薄くなって3手目まで持ちません。
3つの質問に答えると、そのまま文章になる
POINT
ここまでで、記録から候補を出し、趣味と呼べるかを判断するところまで来ました。残るのは、それを文章にする作業です。質問は3つだけで、答えがそのまま①②③になります。
記録から候補を1つ選んだら、次の3問に答えてください。
直近1か月で、2回以上やったことは何ですか → ①題材
それはいつ頃から、月に何回くらいやっていますか → ②頻度・期間
やめようと思ったことはありますか。なぜ続いていますか → ③続いている理由
図4:記録から探して3つの質問に答えると、そのまま欄に書ける状態になる
3問目に最も時間がかかります。ここが面接の3手目にあたるので、時間をかける価値がある部分です。
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適職診断で自分に向いてる仕事を見つける方法|大学生の就活軸 →
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就活で言葉が出ない人へ|面接で詰まらない言語化3STEP →
趣味がないのではなく、続けていることに名前を付けていないだけ、という状態がほとんどです。
3つの質問で書き出した内容は、そのまま次の企業でも使えます。ただし、提出先が5社、10社と増えると、どの企業にどの題材で出したかが分からなくなります。趣味・特技は企業ごとに書き直さなくていい項目なので、一度書いたものを残しておくと、2社目からの提出が早くなります。
書かないほうがいいものと、その理由
「書かないほうがいいもの」は多くの記事に並んでいますが、理由がまとめて「印象が悪いから」になっています。理由が違えば対処も変わるので、ここでは3種類に分けます。
上から2つは題材そのものの問題、3つ目と4つ目は置き方の問題、最後の1つは構造の問題です。
POINT
「書かないほうがいい」は1つの理由でまとめられがちですが、実際は3種類あり、対処もそれぞれ違います。印象の問題として避けるものは、この表の中に1つもありません。
ギャンブルと飲酒が向かない理由
この2つは、②(頻度・期間)を書いた時点で評価が変わります。「週3回」と書けば頻度としては十分ですが、その頻度が別の意味を持ちます。頻度を正直に書けない題材は、この欄と相性が悪い、という判断で足ります。
嘘が破綻するのは3手目
やっていないことを書く場合、1手目と2手目は突破できます。
たとえば茶道と書いたとします。流派を聞かれれば、調べれば答えられます。何年やっているかも、決めておけば言えます。答えられなくなるのは3手目です。「なぜ続けているのですか」は、続けていない人には作れません。
その場で作った答えは、さらに掘られると崩れます。「どんなときに面白いと感じますか」「うまくいかない時期はありましたか」。これらは全部、続けている人なら考えなくても出てくる質問です。
そして、面接は1回で終わりません。二次、最終と進むと、同じ話を別の人が別の角度から聞きます。そのたびに、前回どう答えたかを思い出す必要が出てきます。
嘘の問題は、ばれるかどうかではありません。覚えておく量が、選考が進むほど増え続けることです。
続けていることを書けば、この負担はゼロになります。その場で考えても答えられるからです。
迷ったときの一問
CHECK
これは、なぜ続いているのか
その場で言えるなら書けます。言葉が出てこないなら、記録から探す5つの入口に戻ります。
避けるべき題材があるのではなく、3手目を答えられない題材があるだけです。
面接で深掘りされたときの答え方
ここまでで、書く題材と書き方は決まりました。残るのは、面接で聞かれたときの答え方です。
3手目は、言い換えが多いだけ
面接官が趣味・特技を掘るとき、質問の形はいくつもあります。とはいえ、聞かれているところは同じです。
なぜ始めたのですか
なぜ続いているのですか
どんなときに面白いと感じますか
いちばん印象に残っているのは何ですか
やめようと思ったことはありますか
5つとも、答える材料は「なぜ続いているか」ひとつで足ります。始めたきっかけと続いている理由が違っていても構いません。むしろ、違っているほうが自然です。
3つの質問の3問目に時間をかけた理由が、ここにあります。
POINT
深掘りの質問は形がいくつもありますが、聞かれている中身はほぼ同じです。準備するのは「なぜ続いているか」の1つだけで足ります。
立派な理由を作らない
「なぜ続いているのですか」に、意味のある答えを用意しようとすると止まります。実際に続いている理由は、たいてい地味です。
他にやることがない時間帯だからです
始めた頃より下手になりたくないだけです
やめると寝つきが悪くなるので続いています
どれも立派ではありませんが、続いている事実の説明としては成立しています。作った理由は次の質問で崩れますが、実際の理由は何度聞かれても同じ答えが出ます。
4手目まで来たとき
さらに掘られて「その経験は仕事でどう活きますか」と聞かれることがあります。ここで無理に仕事へつなげる必要はありません。
この欄で観測できるのは時間の使い方と続け方です。「仕事に直結します」と言い切るより、「この進め方は、◯◯の場面でも使っています」と、別の場面での再現を1つ挙げるほうが自然です。PC・ものづくりの例文で「友人から資料作成を頼まれることもあります」と書いたのが、これにあたります。
なお、質問が配慮すべき事項に踏み込んできた場合の対応は、厚生労働省が求職者向けのページで案内しています。
📚 もっと詳しく
新卒の面接で聞かれること30選|答え方・回答例と深掘り質問 →
趣味・特技の深掘りで用意するのは1つだけです。なぜ続いているかを、飾らずに言えるようにしておいてください。
エントリーシートの趣味・特技に関するよくある質問
まとめ
この欄で見られているのは、題材の珍しさではなく、書いたことについて話せるかどうかです。判断の基準は1つで、「なぜ続けているのか」を3手目まで自分の言葉で答えられるかです。
書くときは、①題材 ②頻度・期間 ③続いている理由 ④そこから始めた行動、の4つで組み立てます。欄が小さいときは④から落とし、③は欄に書かなくても口で答えられるようにしておきます。
題材が出てこないときは、思い出そうとせずに記録を見ます。動画の視聴履歴、購入履歴、写真フォルダ、毎月の支出、友人から任される役割。この5つから、続けていることがたいてい1つ見つかります。
趣味がないのではなく、続けていることに名前を付けていないだけ、という場合がほとんどです。名前を付けて、頻度と期間を添える。それだけで、この欄は面接の入口として働きます。
出典
厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」(公正な採用選考特設サイト)
厚生労働省「公正な採用選考の基本」(公正な採用選考特設サイト)
厚生労働省「全国高校統一応募用紙の見直しについて」(PDF)
厚生労働省「求職者の皆様へ」(公正な採用選考特設サイト)
本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。全国高等学校統一応募用紙の改訂は令和7年度卒業予定者から適用されているものです。厚生労働省の指針や様式が改定された場合は、該当箇所を更新します。対象は新卒採用のエントリーシートです。




