就活がうまくいかないまま、卒業の時期が近づいてきた。そんなときに浮かぶのが「就職留年」です。
決める前に、確かめたいことが4つあります。不利になるのか、応募できる企業、増える費用、留年以外の選択肢です。
就職留年そのものが不利になる、という公的なデータはありません。ただし卒業してしまうと、応募できる企業は減ります。
学費も、多くの大学では1年分をもう一度払うことになります。時間が増えても、翌年度に内定が出るとは限りません。
※ この記事で扱うのは、就活を続けるために卒業時期を延ばす「就職留年」です。単位不足や体調で卒業が延びた場合の話し方は、面接で留年を説明する方法にまとめています。
就職留年とは
まぎらわしい言葉が3つあるので、先に整理します。
就職活動を続けるために卒業時期を延ばし、在学したまま翌年度の就職活動へ参加することを、一般に就職留年と呼びます。法令や大学制度上の正式名称ではなく、卒業時期を延ばせる条件や手続きは大学によって異なります。
単位不足、卒業論文、病気などにより卒業要件を満たせず、在学期間が延びる状態です。大学の制度によっては、追加の納付が必要になります。金額や手続きは大学によって異なります。
大学を卒業した後、正社員として就職せずに就職活動を続けることです。応募時は既卒者となります。大学の学費はかかりませんが、大学の設備や支援を引き続き利用できるかは、大学ごとに確認してください。
| 比較項目 | 就職留年 | 通常の留年 | 就職浪人 |
|---|---|---|---|
| いまの立場 | 在学生 | 在学生 | 既卒者 |
| 卒業時期が延びる理由 | 就職活動を続けるため | 単位不足、卒業論文、病気など | (すでに卒業している) |
| 大学へ追加で支払う費用 | 大学の制度により発生する | 大学の制度により発生する | かからない |
| 面接で説明すること | 延ばした判断と、その後に変えた行動 | 満たせなかった事情と、その後の対応 | 卒業後の過ごし方と、就職活動の進め方 |
就職留年は就職に不利になるのか
就職留年をしたという事実だけで、選考から一律に外れるわけではありません。
就職留年は在学中の身分です。卒業見込みが出れば、新卒採用の枠にそのまま応募できます。書類上の立場は、留年していない学生と変わりません。
変わるのは、卒業してしまった後です。
卒業後も就職活動を続ける場合、応募先は「既卒者を受け付けている企業」に限られます。これについては、実際の数字があります。
厚生労働省が常用労働者30人以上の3,253事業所に聞いた調査です。この割合は5年前とほとんど変わっていません。2019年度の採用枠でも、応募可能が70%、採用に至ったのが46%でした。
| 思い込み | 実際 |
|---|---|
| 卒業時期を延ばせば、必ず新卒として応募できる | 応募条件は企業ごとに違います。卒業年度の上限を設けている企業もあります |
| 卒業したら、新卒採用には応募できない | 既卒者を受け付ける企業が71%あります |
| 卒業時期を延ばせば、いまより良い内定が出る | 時間が増えても、行動が変わらなければ結果は変わりません |
国の指針には、既卒者が卒業後少なくとも3年間は新卒枠へ応募できるよう募集条件を設定すること、と書かれています。
ただし指針の本文は「講ずるように努めること」です。企業への義務でも、守らなかった場合の罰則でもありません。
2020年8月の調査では、既卒者の応募を受け付けた企業のうち、経過期間に上限を設けていないのは43%でした。1年を超えて2年以内までとする企業が29%あります。
就職留年をした人の内定率のような統計は、公的には存在しません。文部科学省の学校基本調査が、留年者数そのものを調べていないためです。
同じ調査で把握されているのは、中退した人と休学した人の数だけです。「留年すると内定率が◯%下がる」という数字を見かけても、公的な裏づけはありません。
裏を返せば、留年したこと自体が結果を決めるわけでもありません。面接で見られるのは、卒業時期を延ばした判断と、その後に変えた行動です。
よく見かける98.0%は、就職を希望した人に対する割合です(令和8年3月卒・4月1日現在)。分母は卒業者全体ではありません。
卒業の時点で就職していない人は、毎年4万人以上います。就職留年を選ぶかどうかにかかわらず、珍しいことではありません。
卒業後も新卒採用に応募できるか
卒業後でも新卒採用へ応募できる企業はあります。卒業した時点で、すべての新卒採用から外れるわけではありません。
国の指針では、新卒採用にあたって、既卒者が卒業後少なくとも3年間は応募できるよう企業に努めることが示されています。
ただし、この指針は、応募受付を企業へ義務づけるものではありません。企業に努力を求めるもので、すべての企業への応募を保証する制度でもありません。
実際の応募条件は企業ごとに異なります。卒業年度だけで判断せず、志望企業ごとに最新の募集要項を見ておくのが確実です。
見る場所は2か所です。ほとんどの企業については、この2か所だけで判断できます。
募集要項に書かれていない条件が、エントリー画面の選択肢に表れることがあります。書いていないから応募できる、とは限りません。
上の2か所で判断できない場合だけ、採用窓口へ問い合わせます。志望度を伝えたり評価を聞いたりせず、応募資格だけを短く聞くのがおすすめです。次はGAKUTEN編集部が作成した文例です。
就職留年にかかる費用
留年しても学費が安くなる大学は、思っているより少数です。
学費の規程を公式サイトで確認できた19校のうち、留年や卒業延期でも通常どおり満額を納める大学が12校ありました。
残り単位に応じて減額する制度があったのは5校、履修した単位数で金額が決まる従量制が2校です。国立4校と公立2校は、いずれも減額の規定が見当たりませんでした。
まず前提として置いておくのは、1年分をもう一度払う金額です。減額制度が使えれば、そこから軽くなります。
大学に納める費用は、次のような項目に分かれます。
- 授業料:年額を満額払うのか、履修する単位数に応じて変わるのか
- 施設設備費:在籍が続くあいだ発生するか。減額されないか
- 実験実習費:所属学科で必要になるか
- 保険料:学生教育研究災害傷害保険などの加入が続くか
- 諸会費:学友会費、後援会費などが継続して必要か
- 在籍料:卒業延期者向けに、授業料とは別の金額が設定されていないか
- 減額制度:卒業に必要な残り単位が少ない場合に、減額される仕組みがあるか
残り単位が少なければ、満額を払わずに済むことがあります。制度を公表している5校の例です。
| 大学 | 減額される条件 | 何が減るか | 減らないもの |
|---|---|---|---|
| 上智大学 | 残りの単位が12単位以下 | 授業料・教育充実費・実験実習費が、学期ごとに各2分の1 | 在籍料30,000円と保険料は全額。申込は不要 |
| 立命館大学 | その学期の受講登録が8単位以下 | その学期の授業料が2分の1 | 減額後の金額は公表なし |
| 専修大学 | 卒業要件の不足が20単位以下 | 授業料が2分の1(21単位以上は全額) | 施設費と教育充実費は徴収しない |
| 龍谷大学 | 在学年数が学部4年を超える | 基本授業料+1単位あたりの登録料×登録単位数(上限は通常の授業料) | 施設費は年間50,000円の減額のみ |
| 東海大学 | 第9セメスター以降 | 基本料+不足単位数×学部ごとの単位料 | 学生会費・学園費などは別途 |
授業料が半額になっても、支払う総額が半額になるとは限りません。在籍料や保険料、諸会費はそのまま必要な大学があります。
制度は縮小する方向にあります。中京大学は2018年4月に、留年者と卒業延期者に対する減免を廃止しました。
神奈川大学も2026年度から特例措置を廃止し、履修登録単位数にかかわらず最高年次の学費を適用すると公表しています。
いま制度があっても、来年度も続くとは限りません。最新年度の学費規程を必ず見てください。
見落としやすいのが奨学金です。
日本学生支援機構は、貸与奨学金と給付奨学金のどちらも、卒業延期が確定した場合は原則として「廃止」になると公表しています。
給付奨学金では、支給済みの金額の返還を求められることがあります。学業成績が著しく不良で、やむを得ない事由がない場合です。
学費が減額されても、奨学金が止まればその分だけ手元は苦しくなります。
在学中に受給している場合は、卒業時期を延ばす前に、大学の窓口で扱いを確認しておくことをお勧めします。
在学期間が延びれば、暮らしにかかるお金もその分続きます。実家から通う人と一人暮らしの人で、差が大きいところです。
家賃は更新料が発生する時期に重ならないかまで見ておくと、あとで慌てずに済みます。
働き始める時期が遅れると、その期間に得られた可能性のある収入も判断材料になります。ただし、実際に請求される費用ではありません。大学への納付金や生活費とは別に考えてください。
自分の大学の金額が分かるまでは、次の3つのどれに当てはまるかで見当をつけられます。
ケース1|減額制度がない私立大学
授業料の平均が968,069円、施設設備費の平均が172,550円です。合わせて年額およそ114万円になります(文部科学省、令和7年度入学者の平均額)。
ケース2|国立大学
省令の標準額は年額535,800円です。省令は1.2倍までの設定を認めているため、東京大学のように642,960円とする大学もあります。
ケース3|残り単位が少なく、減額制度が使える私立大学
授業料が半額になる大学であれば、授業料の部分は平均額の半分でおよそ48万円です。在籍料や保険料、諸会費はこれとは別に必要です。
ここに生活費と就職活動の費用が乗ります。家賃や交通費は、在学が続くあいだそのまま続きます。
金額の見当がついたら、負担する人と話す前に紙に書き出しておくと、話が早く進みます。
留年以外に残っている選択肢
卒業時期を延ばす前に、比べておきたい選択肢が5つあります。どれか1つを勧めるものではありません。就職留年と並べて見ることが目的です。
いまの卒業年度でも、募集が続いている企業があります。秋採用、冬採用、通年採用、追加募集といった形です。
就活のピークを過ぎたから求人がない、とは限りません。まずは応募できる求人が残っているかを、自分の卒業年度で検索して確かめてください。今から動く手順は就活に出遅れた人向けの最短ロードマップでまとめています。
卒業したあと、既卒者として新卒採用に応募する方法です。国の指針では卒業後3年間の応募機会が示されており、既卒者を受け付ける企業があります。
ただし、すべての企業が該当するわけではありません。志望企業の募集要項で、既卒者の応募可否を1社ずつ確認します。学費がかからない点は就職留年との大きな違いです。
内定を持っている場合は、辞退を決める前に中身をもう一度見てください。
知名度だけで辞退を決めると、仕事内容や働く条件を十分に比較できません。一方、就職留年を避けるためだけに、仕事内容や条件へ納得できていない企業への入社を決めることも、慎重に考える必要があります。
大学院進学では研究と学費の負担が増えます。就職時期を延ばすことだけを目的にせず、学びたいテーマや進学後の計画があるかを確認してください。
在学期間を延ばす方法には、休学もあります。休学は大学ごとに扱いが違うため、次の5点を大学に確認してください。
一人で決める前に、大学の窓口や費用を負担する人に話しておくことをお勧めします。相談できる先が4つあります。
決める前に確認する7つの質問
就職留年をした事実だけで、就職に一律に不利になるとは言えません。ただし、応募条件や選考での受け止め方は企業によって異なります。
理由を聞かれた場合に、卒業時期を延ばした判断と、その後に変えた行動を説明できるようにしておきます。
判断の前に確かめたいことを7つに分けました。見出しを押すと中身が開きます。答えにくい項目があれば、そこを先に確認すると判断しやすくなります。
見直す点の洗い出し方は自己分析の深掘り質問50選が参考になります。
7つすべてに答えられても、就職留年を選ぶべきという判定ではありません。ここまで確かめて、ようやくほかの選択肢と同じ基準で比べられる、という意味です。
就職留年を選んだ後の進め方
決めたあとは、次の順番で進めます。先に大学の手続きと期限を確認します。卒業予定時期が確定しないまま応募すると、企業へ正確な情報を伝えられないためです。
面接で留年を説明する方法
面接では、留年を無理に良く見せる必要はありません。共通するのは、卒業時期が延びた事実、理由、現在の状況を正確に伝えることです。面接で聞かれる内容そのものは新卒の面接で聞かれること30選にまとめています。
ただし、説明の中心は異なります。
就職留年では、卒業時期を延ばす前の就職活動で見直した点と、その後に変えた行動を説明します。単位不足や体調などによる通常の留年では、卒業時期が延びた理由、現在の卒業見込み、働くうえで影響することがあるかを中心に伝えます。
- 卒業時期が延びた事実
- 必要な範囲での理由
- 現在の卒業見込み
- 働くうえで影響することがあるか
すべてを長く話す必要はありません。まず事実と判断を簡潔に伝え、聞かれた内容に応じて、その後の行動を補足します。
これらは、GAKUTEN編集部が回答の組み立て方を示すために作成した架空例です。実在の学生の回答ではありません。自分の事実に置き換えてください。
就職留年のよくある質問
まとめ
卒業後でも新卒採用へ応募できる企業があり、現在の卒業年度で応募できる募集が残っている場合もあります。
志望企業の応募条件と、自分の場合に増える費用を先に確認します。
変える行動まで決めてはじめて、ほかの選択肢と同じ基準で比較できます。
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出典
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- 厚生労働省「青少年雇用機会確保指針(平成27年厚生労働省告示第406号)」
- 厚生労働省「3年以内既卒者は「新卒枠」で応募受付を!」
- 厚生労働省「新卒応援ハローワーク」
- 青森労働局「【事業主の皆さまへ】卒業後3年以内の既卒者は、「新卒枠」での応募受付を!」
- 文部科学省「学校基本調査(令和7年度確定値)」
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