五大商社に興味はあるものの、「そもそも総合商社とはどんな会社なのか」「5社は何が違うのか」を説明できない。就活を始めたばかりの人ほど、この状態のまま選考に進んでしまいがちです。
総合商社は、国内外の商品やサービスを流通させながら、事業への投資まで手がける企業です。扱う領域に事実上の制限がなく、しかも日本にしかない業態のため、「何をしている会社なのか」が最も掴みにくい業界のひとつでもあります。
本記事では、総合商社の基礎知識から、五大商社それぞれの強み・年収・社風の違い、そして内定を勝ち取るための対策までをわかりやすく解説します。
五大商社とは
5社の違いは、純利益に占める資源事業の比率でほぼ説明がつきます。財閥系・非財閥系という分類より、こちらのほうが業績に直結します。
五大商社とは?
五大商社に含まれるのは、三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅の5社です。いずれも幅広い商材を扱いながら、事業への投資まで手がけています。
とはいえ、5社を並べただけでは違いが見えません。カッコ内の数字に注目してください。純利益に占める資源事業の比率です。この1つの数字が、5社の業績の違いをほとんど説明します。
三菱商事 財閥系|資源比率 54.3%
天然ガス・金属資源に強みを持ちつつ、食品から生活産業まで幅広く展開。分散型の事業ポートフォリオが最大の武器
三井物産 財閥系|資源比率 52.4%
「資源の三井」。鉄鉱石・LNGの上流開発で世界トップクラス。近年はヘルスケアなど非資源へ投資を拡大
伊藤忠商事 非財閥系|資源比率 14.8%
非資源No.1。繊維・食品・生活消費財が主戦場で、「利は川下にあり」を掲げる。2025年度に純利益トップへ
住友商事 財閥系|資源比率 13.7%
5社で最も資源比率が低い。メディア・デジタル、インフラ、不動産といった生活密着型の領域が業績を牽引
丸紅 非財閥系|資源比率 29.0%
穀物取扱量が国内トップ。電力ではIPP(独立系発電)で世界有数の実績を持ち、グリーン分野を強化中
出典:各社2026年3月期決算短信・決算説明会資料
5社合計の連結純利益は3兆7,000億円規模になります。エネルギーから食料、機械、化学品まで、日本の産業の入口を押さえている企業群です。
学生からの人気も高いままです。文化放送キャリアパートナーズの「2027年卒 就職ブランドランキング(前半)」では、伊藤忠商事が7年連続で1位となり、丸紅6位、住友商事7位、三菱商事12位、三井物産18位と、5社すべてがトップ20に入りました。商社業界だけで見れば、1位から5位までを五大商社が占めています。注目したいのは並び順です。このあと見る純利益の順位とは、上下が入れ替わっています。人気が集まるほど枠の奪い合いになりますが、5社合計でも新卒の枠は年600人前後しかありません。
総合商社とは?
五大商社が属する「総合商社」は、国内外の商品やサービスを流通させながら、事業への投資まで手がける企業です。資源・エネルギーから食料、機械、化学品、繊維、情報通信まで、扱う領域に事実上の制限がありません。
収益のあげ方は2つに分かれます。
トレーディング
売り手と買い手の間に入って取引を成立させる事業。取引額に応じた手数料と、仕入れ値と売り値の差が商社の取り分になる
事業投資
企業に出資し、経営に加わる事業。出資先の利益のうち持ち分にあたる額、配当、株式を売ったときの値上がり分が入ってくる
かつては仲介が中心でしたが、いまは投資が主役です。単に出資して配当を待つのではなく、自社から人材を送り込んで経営そのものを担う「事業経営型」へ進んでいます。
「日本にしかない業態」と言われるのは、この2つが1社に同居しているからです。海外にも巨大な資源トレーダーや投資会社はありますが、両方を抱えて商材に制限がない形は他国に見当たりません。英語でもそのまま「Sogo Shosha」と呼ばれます。
商材を動かすとき、総合商社は3つの機能を同時に提供します。
この3つがあるため、メーカーが自社で直接輸出入するよりも、商社を通したほうが安く早く済むケースが生まれます。
ただし、この3機能はいずれも外部化が進みました。 物流は専門のフォワーダーが担うようになり、金融にはより低コストな手段が生まれ、情報はインターネットで手に入るようになりました。仲介だけでは稼ぎにくくなったことが、商社が事業投資へ軸足を移した背景にあります。先ほどの「いまは投資が主役」は、この流れの結果です。
扱う商材も、資源分野から非資源分野へ移ってきました。この2語は面接で前提知識として扱われるため、必ず押さえておきたいところです。
資源分野
石油・天然ガス・鉄鉱石など、地面から掘り出すものを扱う分野。相場が動けば利益もそのまま上下する
非資源分野
資源以外のすべて。食料、機械、住宅、繊維、通信、金融まで含む。相場に振られにくいぶん、利益は読みやすい
総合商社と専門商社の違い
違いは、扱う商材と事業構造の2点にあります。
事業投資には大きな資本力が要るため、専門商社では仲介が収益の中心になります。
言い換えると、専門商社を選ぶ人は「その商材にずっと関わりたい」、総合商社を選ぶ人は「扱う対象が変わることを受け入れる」という違いでもあります。 面接で「なぜ総合商社なのか」と聞かれたときに効くのは、仕事内容の比較よりこちらの整理です。
五大商社と七大商社の違い
豊田通商と双日を足した7社を七大商社と呼びます。規模では五大に届きませんが、豊田通商は自動車、双日は航空機とインフラで存在感があります。直近の決算では豊田通商の売上高が住友商事・丸紅を上回っており、順番どおりの優劣にはなっていません。
1970年代前半までは「十大商社」という言い方もありました。安宅産業が伊藤忠商事に吸収されたのが1977年、日商岩井とニチメンが双日になったのが2004年、トーメンが豊田通商と一緒になったのが2006年です。5社に絞られていった過程そのものが、この業界の入れ替わりの激しさです。 就活で使うぶんには、五大と七大を知っていれば十分です。
財閥系と非財閥系の違い
企業研究の入口として、まずこの分類から入ります。
財閥は戦後に解体されましたが、つながりは残りました。株式を持ち合い、社長どうしが集まる会(三菱の「金曜会」、三井の「二木会」)がいまも続いています。効いてくるのは出資先の数です。議決権を20〜50%握っている会社なら、商社が直接その取引に関わっていなくても、儲かった分の持ち分が手元に入ります。
ただし、この分類だけでは業績の違いは説明できません。住友商事は財閥系ですが、資源比率は13.7%と5社で最も低く、収益構造は非財閥系の伊藤忠商事に近くなっています。同じ財閥系の三菱商事・三井物産は50%超なので、括りの中ですでに割れています。財閥系・非財閥系に資源比率を重ねて見ると、実態がつかめます。
五大商社5社の比較表
売上高の大きさは実力を表しません。総合商社を比べるときは、純利益と「資源比率」を見てください。
総合商社の売上高(IFRS上の「収益」)は、会計処理の方針によって計上範囲が各社で異なります。そのため規模の比較には向きません。実力を測るなら純利益です。
主要指標の比較
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出典:すべて各社の2026年3月期(2025年度)有価証券報告書。従業員数は単体(有報「従業員の状況」の値)。 ※ネット上の記事の多くは1つ前の2025年3月期の数字(三菱商事2,033万円、丸紅1,709万円など)を「最新」として掲載しているため、比較の際はご注意ください。
連結純利益ランキング(2026年3月期)
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出典:各社2026年3月期決算短信・決算説明会資料(資源比率のセグメント分類は各社の定義に準拠)
2025年度は、非資源に強い伊藤忠商事が初の純利益9,000億円台を達成し、トップに立ちました。理由は資源比率です。資源価格が下がった局面で、資源比率50%超の三菱商事と三井物産は減益。資源比率が低い伊藤忠・住友・丸紅は増益となりました。

純利益に占める資源事業の比率(2025年度)
ただし2027年3月期の見通しでは、三菱商事が1兆1,000億円という強気の計画を掲げています。順位は再び入れ替わる見込みです。「誰が1位か」より「どんな市況で誰が強いか」を押さえておいた方がいいです。
初任給・採用予定数(2027年度入社)
出典:各社新卒採用サイトの募集要項。三菱商事は2026年度実績。三井物産はGlobal区分(Regionalは学士330,000円/修士365,000円)。伊藤忠商事のビジネスエキスパート職は265,834円、三菱商事のバックオフィス職は260,000円。

初任給の比較(2027年度入社)
初任給には5社で2万5,000円の差があります。平均年収の順位(三菱商事がトップ)とは並びが違う点も見ておきたいところです。伊藤忠商事は2025年1月に公表した人的資本強化策で平均年収を約10%引き上げると表明しており、実際に2025年3月期の1,805万円から2026年3月期は1,991万円へと約10%上昇しています。若手の待遇でも先行している会社です。
また、新卒採用数は各社100〜140名程度。5社合計でも年600人前後しか枠がありません。これが五大商社の就職難易度の実態です。
各社の特徴と強み分野
5社は「何で稼いでいるか」がまったく違います。志望動機はここから組み立ててください。
各社の説明には「日常で触れているもの」を添えました。これは雑学ではなく、志望動機の入口として使えます。 自分が日常的に触れている商品から遡ると、その会社のどのセグメントに興味があるのかが具体的になります。
三菱商事|総合力とバランスの取れた事業ポートフォリオ
三菱商事を一言で表すなら、分散です。天然ガスと金属資源で稼ぎつつ、食品・インフラ・生活産業まで手を広げているため、どこか1分野が崩れても全体は揺れにくくなっています。
連結対象会社は1,000社以上、海外拠点は100を超えます。潤沢な資金力を背景に、あらゆる事業機会にアプローチできる点が他の4社にないスケールメリットです。
近年の投資領域:米国シェールガス事業に約8,000億円規模で参画、サーモン養殖事業を1,450億円で買収、フィリピンのデジタル金融事業へ出資。中期的には「経営戦略2027」のもと、鉄鋼製品事業や資源素材事業の拡大、食品流通・小売事業への追加投資を掲げています。
日常で触れているもの:ローソン、三菱食品が輸入するハリボー、ノルウェー産サーモン
三井物産|資源上流開発の圧倒的な実績
「資源の三井」という呼び名が、そのまま強みを表しています。鉄鉱石とLNG(液化天然ガス)の権益量は世界でも上位に入ります。上流から押さえにいくのが、この会社の型です。
裏を返せば資源価格の影響を受けやすいということでもあり、事業ポートフォリオの組み替えを積極的に進めています。
近年の投資領域:欧州のタンクターミナル事業の完全子会社化、台湾の洋上風力発電といった「グローバル・エナジー・トランジション」領域。加えてインドの鶏肉事業などの「ウェルネスエコシステム」領域。「中期経営計画2026」では鉄鋼製品事業を2023年度比で2倍以上の増益に伸ばす目標を掲げています。
日常で触れているもの:セブン-イレブン(セブン&アイHDの主要株主)、サイゼリヤの食材、松屋の牛肉
伊藤忠商事|非資源No.1と「利は川下にあり」
資源比率は14.8%で、5社の中では最も資源から遠い会社です。繊維・食品・生活消費財が主戦場で、資源価格の変動に左右されにくい収益構造を確立しています。2025年度に純利益で首位に立てたのは、この収益構造によるものです。
経営哲学として掲げるのが「利は川下にあり」。原料調達(川上)よりも消費者に近い領域(川下)に利益の源泉があるという考え方です。
近年の投資領域:セブン銀行との資本業務提携(約650億円)、伊藤忠食品の完全子会社化(約780億円)、サンフロンティア不動産への出資(約320億円)。生活消費・不動産・金融での足場固めを鮮明にしています。ROEは商社業界トップクラスの15%超です。
日常で触れているもの:ファミリーマート、デサント、ドールのバナナ、不二家
住友商事|メディア・デジタルと都市開発
資源比率13.7%は5社で最も低い数字です。メディア・デジタル、インフラ、不動産といった生活密着型の領域が業績を牽引しており、「エネルギートランスフォーメーション」「都市総合開発」を柱に据えています。
不動産事業では、オフィスビル・商業施設・住宅・物流施設・不動産ファンドまで、開発から運用までをグループ一貫で手がけるノウハウを持ちます。
近年の投資領域:DXやAIを活用した業務革新・新規事業創出。「中期経営計画2026」ではNo.1事業群をテーマに既存事業の強みをさらに伸ばす方針。約70年におよぶ農業ビジネスのノウハウを活かした次世代アグリ事業にも取り組んでいます。
日常で触れているもの:サミットストア、J:COM、SCSK、ドラッグストア「トモズ」
丸紅|穀物取扱量国内No.1と電力・グリーン
丸紅の収益は、穀物と電力の2本が支えています。穀物の取扱量は国内トップで、そこから派生する飼料・肥料ビジネスでも大きな収益を上げています。電力ではIPP(独立系発電事業)で世界トップクラスの実績を持ちます。
近年の投資領域:再生可能エネルギーや森林・植林事業の拡大を通じて「商社のグリーンのトップランナー」を目指す方針。「中期経営戦略GC2027」では2027年度の連結純利益6,200億円以上を目標に掲げ、日本市場でのIT・デジタルソリューション事業拡大、米国市場での農業資材販売強化を打ち出しています。
日常で触れているもの:マルコメの味噌の原料、ドトールのコーヒー豆、不二製油の植物性油脂、航空機リース
各社基本情報の出典:各社2026年3月期 有価証券報告書・各社会社概要
5社に共通する成長領域
各社の色は異なりますが、投資が向かう先には明確な共通項があります。
脱炭素:水素、アンモニア、SAF(持続可能な航空燃料)、再生可能エネルギー
デジタル:AIによる業務の作り替え、データセンター、金融サービス
消費者に近い側へ:小売、リテール金融など、生活者と直接つながる事業
ヘルスケア:病院の運営、医薬品の流通、予防と介護
強み分野を押さえたら、次は中期経営計画で「いまどこに投資しているか」を見ておくとよいです。 志望動機が「その会社の過去の実績」から「これからどこへ行こうとしているか」の話に変わります。ここまで語れる学生はまだ多くありません。
社風・求める人物像の違いと、自分に合った五大商社の見極め方
求める人物像は、採用サイトの「言葉づかい」に出ます。要約された記事ではなく、各社の原文を読み比べてください。
ビジネスモデルに大きな違いがないからこそ、五大商社の面接では「なぜ他の商社ではなく当社なのか」が必ず問われます。ここからは、5社の新卒採用サイトを実際に読み比べて見えた違いを紹介します。
伊藤忠商事:「アオい情熱を待っている」
「自分の信念をツラぬき、口だけではなく行動で示す人、常識や固定概念を壊し、道なき道を切り拓く人、アオくさくて笑われてしまうような、でっかい夢に情熱を燃やせる人に出会いたいと思っています。」
「この青い地球を動かしていく原動力は、いつだって人が心に持つアオい情熱です。あなただけのアオさを、あなただけの熱を、ありのまま見せてください。」
5社のなかで最も感情的で、最も熱量の高い文章です。石井社長COOのメッセージも「商人は水であれ」と、経営理念ではなく商人としての心構えを語っています。ESや面接で優等生的な回答をすると、ここでは刺さりません。
三井物産:「あらゆる個性の集う場」
「三井物産は、あらゆる個性の集う場です。一人ひとりが志を持ち、刺激し合って、新たな価値を生み出しています。そこは自由闊達な場。あなたの色を加えてください。」
「私たちの共通点。それは自らの仕事で世界を変えていけると信じていること。」
「人の三井」と言われる通り、主語が一貫して「一人ひとり」「あなた」です。組織ではなく個人に呼びかける文体になっています。
住友商事:「100年を拓く、挑戦を。」
「当社のビジネスや理念に共感し、高い志を持ち、自律的な成長を続け、進取の精神で、グローバルフィールドで新たな価値創造に挑戦する人財を求めています。」
住友商事が社員の価値観として掲げるのが「ハンズオン」です。採用サイトでは「見るだけ、聞くだけ、指示を出すだけ、人任せ、などと対比して、現場で実際に活躍する姿勢」と定義しています。時間軸の長さ(100年)と現場主義が、この会社のキーワードです。
丸紅:「できないことは、みんなでやろう。」
「夢や志を掛け合わせて、ひとりではたどり着けない答えに挑む。できないことは、みんなでやろう。」
「自らに秘める高いポテンシャルを信じ、丸紅グループという場を使ってこれからも大いに成長したい。そんな信念と情熱をもった皆さんと出会えることを、心から楽しみにしています。」(社長メッセージ)
伊藤忠商事が「個」を前面に出すのに対し、丸紅は「みんな」を主語にしています。同じ非財閥系でも、コピーの方向性が真逆なのは示唆的です。
三菱商事:社員インタビューで人物像を見せる
三菱商事については、採用サイトに「求める人物像」として独立した文言のページは確認できませんでした。代わりに社員インタビューが30本以上並んでおり、新卒入社とキャリア入社が混在しています。多様なキャリアパスを見せることで人物像を伝える設計になっています。
丸紅と住友商事も、採用サイトに「求める人物像」という見出しの独立ページを設けていません。「求める人物像は何ですか」と探すより、トップメッセージとキャッチコピーの言葉づかいを読むほうが実態に近づけます。
職掌の呼び方が、この数年で大きく変わっている
意外と知られていませんが、5社とも「総合職/一般職」という古い枠組みから離れつつあります。
出典:各社新卒採用サイト
古い記事には「一般職」「事務職」という表記が残っていますが、現在の募集要項では使われていません。説明会や面接でこの言葉を使うと、情報が古いことがすぐに伝わってしまいます。
自分に合う1社を見極める3ステップ
自分史をつくり、頑張ったこと・辛かったこと・挫折・自分から動いたことを年代別に洗い出します。そこから「どんな環境でやりがいを感じ、何を苦痛に感じるか」を言葉にしておきましょう。
なお三井物産は、この自分史を選考の提出物として実際に課しています(詳細は次章)。自己分析はどの社を受けるにせよ避けて通れません。
この記事の引用も、実際のサイトの熱量までは再現できません。5社のトップメッセージを1時間かけて読み比べるだけで、志望動機の解像度は確実に上がります。
食料分野に携わりたいのに、その分野に注力していない会社を受けても配属される確率は低くなります。丸紅の穀物、伊藤忠商事の生活消費のように、明確に注力している会社を選ぶと志望動機に説得力が出ます。
知っておくべき現実:配属リスク
配属や転勤は組織都合で決まります。希望を出せても通るとは限らず、配属された分野で10年単位の専門性を築く覚悟が必要です。
ただし近年は選択肢が増えています。住友商事の「WILL選考」は初期配属先を確約する選考ですし、丸紅の「Career Vision採用」は募集ポストを明示した配属先決め型の採用です。三井物産も勤務地をGlobal/Regionalから選べます。配属リスクを避けたいなら、こうした枠を最初から狙う手があります。
五大商社の内定を目指すためにやるべき対策
採用枠は5社合計でも年600人前後。5社は選考の設計思想も時期もバラバラなので、同じ準備で全社を受けるのは非効率です。
5社の選考カレンダー(2027年度入社の実績)
まず全体像から押さえましょう。下の図は、5社が実際に公表した2027年度入社の選考スケジュールを1本の時間軸に並べたものです。

五大商社 選考カレンダー(2027年度入社の実績をもとに作成)/出典:各社新卒採用サイト
この図から、就活生にとって重要な事実が3つ読み取れます。
三井物産は前年10月末にエントリーが始まる
3年生の秋には動き出していないと、第1クールに間に合いません。
丸紅のCareer Vision採用は1月末が締切で、年1回のみ
配属先を確約して受けたいなら、ここを逃すと翌年まで機会がありません。
伊藤忠商事の面接は6月1日開始
他社より遅いぶん、3月・6月選考の結果を見ながら受けられます。
5社とも選考は複数回あり、三菱商事と住友商事は3月・6月の2回、三井物産は2クール制です。住友商事は「時期によって有利不利が生じることはありません」と明言しているため、学業や留学の都合に合わせて選んで問題ありません。
5社の選考フローは全部違う
出典:各社新卒採用サイト(2027年度入社実績)
とくに注意すべきは三井物産です。公式サイトに「インターンシップに参加せずに入社することはできません」と明記されています。エントリー時に提出する自分史も、2,000字程度(最大2,500字)で小学校以前10%・中学20%・高校30%・大学以降40%という配分の目安まで指定されています。
決算説明会資料と中期経営計画を読む
対策のなかでいちばん効きます。決算説明会資料を開いたら、見る場所は決まっています。
どのセグメントが利益を稼いでいるか(=実質的な主力)
どこに新規投資しているか(=会社が張っている未来)
どこから撤退しているか(=会社が捨てた領域)
撤退した領域のほうが、情報量が多いこともあります。捨てたものを知っていると、「なぜ当社なのか」に具体的に答えられます。
自分史を先に書き上げる
三井物産の提出物である自分史は、他の4社を受けるうえでもそのまま使えます。2,000字を年明けに書くのはきついので、夏のうちに一度書いておくと後が楽になります。
テスト対策は1月までに始める
三菱商事は2月中旬にテストセンターの締切が来ます。三井物産はC-GABとWEB適性検査の両方が必要です。3年生の3月から始めたのでは間に合いません。
動画とAI面接に慣れておく
伊藤忠商事のPR動画、三菱商事と住友商事のAI面接、丸紅のAIケース面接。5社中4社が、人と話す前に映像・音声の選考を挟んでいます。相手がいない状態で1分話すのは、対人面接とは別の難しさがあります。スマホで自分を撮って見返すところからで構いません。
語学力の扱い
募集要項に「語学力必須」と書かれてはいませんが、筆記試験には英語が出題されます。
ただし各社の公表内容を読むと、語学の位置づけは思ったより控えめです。丸紅はFAQで「英語の能力のみで合否を判断することはありません」と明記し、伊藤忠商事も「人物本位の採用」「体育会に所属しているから有利ということは一切ありません」としています。
TOEIC730点・860点という目安がよく語られますが、5社のいずれも募集要項でスコアの下限を示していません。 目安として持つのは構いません。そのうえで、スコアを積み増すことより「英語で何をしたか」を語れるほうが、選考では扱いやすくなります。留学、国際系のゼミ、海外インターンのように、経験とセットで話せる形にしておきたいところです。
学歴フィルターはあるのか
各社とも学歴による選別は明言していません。三菱商事は募集要項に「国籍、性別、大学、学部、学科は不問」と記載しています。
学歴が気になるのは自然なことです。とはいえ、実際に対策できるのはテストセンターの点数とESの完成度の2つだけです。各社ともテストの基準点は高く、ここは学歴と関係なく点数で決まります。学歴に不安があるほど、この2つに時間を寄せるのが有効です。
説明会・面接で使われる商社用語
意味を正確に押さえておくと、グループディスカッションや逆質問の質が上がります。
なかでも持分法適用会社とPMIの2語は、商社の収益構造を説明するときに必ず出てきます。 前半で触れた「いまは事業投資が主役」という話は、この2つが分かっていないと自分の言葉になりません。
五大商社以外のおすすめ商社
併願先を知ると、逆に五大商社を選ぶ理由がはっきりします。
七大商社の豊田通商・双日
豊田通商は、トヨタグループで唯一の総合商社です。金属と自動車部品の物流が主戦場で、アフリカの自動車事業でも存在感があります。石炭・重油発電事業からの完全撤退を進め、グリーンエネルギーへの投資を増やす方針です。直近の売上高は10兆円規模で、住友商事・丸紅を上回ります。
双日は、ニチメンと日商岩井が2004年に一緒になってできた会社です。化学品と金属・資源が柱で、ボーイングの販売代理店として航空機も扱います。五大商社に比べて組織が小さいぶん、1人あたりが担当する範囲は広くなります。
専門商社という選択肢
併願先として最も現実的なのが専門商社です。特定の分野が売上の半分以上を占める商社を指し、親会社の性格でメーカー系・商社系・独立系に分かれます。
専門商社を「五大商社に届かなかったときの受け皿」と捉えている人がいますが、選ぶ理由はもっと積極的です。 扱う商材が絞られているぶん、希望しない分野に配属されるリスクが小さくなります。前章で触れた配属リスクが気になる人にとっては、こちらのほうが条件に合うこともあります。
探すときのコツは、普段使っているモノやサービスから川上をたどることです。上の表の伊藤忠丸紅鉄鋼や三菱食品のように、五大商社の名前がそのまま入っている会社もあります。
併願先を具体的に持っておくと、「なぜ総合商社なのか」にも自分の言葉で答えられます。 比較対象がないまま志望動機を書くと、どうしても抽象的になります。
五大商社に関するよくある質問
ここまで五大商社の違いをお伝えしてきましたが、いざ選考が始まると、5社それぞれの締切と提出物を追いかけるだけで手一杯になります。三井物産の10月エントリーと丸紅の1月締切を同時に追うだけでも、管理を紙やメモアプリでこなすのは現実的ではありません。
「学生転職」は、就活管理から求人応募までをひとつにまとめた就活サービスです。
適職診断・自己分析が無料:自分に合う業界と職種を、質問に答えるだけで確認できます
選考管理が全機能無料:企業ごとの選考ステータス、締切、ESの版を一箇所で管理できます
管理だけで終わらない:商社・メーカーをはじめとした求人にそのまま応募でき、スカウトも届きます
五大商社のように締切がバラバラな企業を複数受けるほど、管理の差がそのまま準備の差になります。

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【出典】財務データ:各社有価証券報告書/各社2026年3月期決算短信・決算説明会資料|採用情報:三菱商事 新卒採用サイト(career-mc.com)、三井物産 採用ポータルサイト(career.mitsui.com)、伊藤忠商事 新卒採用サイト(career.itochu.co.jp)、住友商事 採用サイト(sumitomocorp-recruiting.com)、丸紅 新卒採用サイト(marubeni-recruit.com)|平均年収・従業員数:各社2026年3月期 有価証券報告書|残業時間:各社サステナビリティ/ESGデータ|人気ランキング:文化放送キャリアパートナーズ 就職情報研究所「2027入社希望者対象 就職活動[前半]就職ブランドランキング調査」
※採用情報は2027年度入社(27卒)向けの内容です。2028年度入社の募集要項は各社とも未公開のため、最新情報は各社採用サイトでご確認ください。



