「インターンでチームリーダー」「起業経験あり」「全国大会出場」…

就活を始めると、そんな“すごい人”のガクチカ（学生時代に力を入れたこと）が目に入り、自分の経験が見劣りして見える瞬間があります。

「自分には語れるような実績がない」と落ち込む一方で、何をどう伝えれば評価されるのかも分からず、焦りばかりが募っていく——。

でも本当に、“すごさ”だけが評価の基準なのでしょうか？

この記事では、SNSや面接で見える「すごいガクチカ」の正体を冷静に捉え直し、

“普通の経験”でも企業から評価される本当の理由を、構造的かつ納得感をもって解説します。

なぜガクチカが“すごい人”ばかりに見えるのか？

就活をしていると、「周りのガクチカが強すぎて自分は平凡すぎる」と感じる瞬間が増えていきます。

でも、その感覚は“事実”ではなく、“情報の見え方”に原因があることがほとんどです。

見えているのは“就活用に盛られた成功例”だけ

SNSや就活イベント、OB訪問などで耳に入ってくる他人のガクチカは、たいてい“1番強そうな経験”だけが切り取られて話されています。

いわば、就活用に編集されたハイライトです。

その裏で「ES50社落ちた」「バイトしかやってこなかった」と悩んでいる学生が大勢いることは、可視化されません。

見えているのは“成功の一部だけ”であり、それと自分の全体像を比べて落ち込むのは、情報の非対称性に引っ張られている状態です。

“インターンでリーダー”や“起業経験”が目立つのは目立ちやすいから

最近では、長期インターンや学生起業などの情報が多く出回っており、

「これが普通なの？」「自分だけ何もしていない？」と不安になる学生も多いです。

でもこれは、単に声が大きく発信力のある人たちが目立っているだけです。

大多数の学生は、ゼミ、アルバイト、部活動、サークル運営などで頑張ってきた“普通の経験”をベースに就活しています。

「すごい話を聞く機会が増えた」＝「すごい人しかいない」ではないことを冷静に捉えることが大切です。

比べているのは“経験の中身”ではなく“話し方のインパクト”

他人のガクチカが強く見えるとき、それは内容以上に、語り方・構造・自信の持ち方に違いがあるケースが多いです。

たとえば、「新規事業を任されていた」と聞けばすごそうですが、

実際は「資料作りを手伝っていた」だけかもしれません。

一方で、「飲食バイトを頑張った」という話でも、視点や改善プロセスが整理されていれば、説得力と印象において上回ることもあります。

つまり、「経験そのものの差」ではなく、「見せ方・伝え方の差」が、ガクチカの強弱に見える正体です。

自分の経験が“弱い”と感じてしまう理由とその誤解

「チームを率いた経験もないし、成果も地味。自分のガクチカって通用するのかな…」

そう不安を抱える就活生は多いものの、その“自信のなさ”は、実際の経験の弱さというより、比較される情報環境と語り方の未整理さに原因があります。

比較される前提の就活では“等身大の自分”がかすんで見える

就活の情報環境は、どうしても「目立つエピソード」に引っ張られがちです。

SNSや就活イベントでは、成果がはっきりしている学生や、語るのに慣れている学生の話がシェアされやすく、

自分のような“普通の経験”では戦えないのではないかと感じてしまいます。

特に、「肩書きがない」「プロジェクトを引っ張ったわけじゃない」「特別なインターンに参加していない」という状況では、

“何もない人”のように思えてしまうのも無理はありません。

しかし実際は、就活で求められているのは肩書きやスケールではなく、そこにどんな視点や思考があったかです。

経験そのものではなく「語りの設計」が評価を分ける

同じような経験でも、評価される人とされない人がいるのはなぜか？

それは、「自分の経験をどう意味づけ、どう構造的に語れるか」に違いがあるからです。

たとえば、飲食店のアルバイトであっても、「業務改善を提案し、実行まで持ち込んだプロセス」を整理して話せれば、それは“課題発見〜解決”を示す立派なガクチカになります。

一方で、どれだけ派手な経験があっても、「なぜその経験を選んだのか」「その中でどんな工夫をしたのか」が語れないと、表面的な印象で終わってしまいます。

つまり、企業が見ているのは「すごい話」ではなく、「その人の思考の痕跡」が伝わるかどうか。

だからこそ、“語りの設計力”が就活の本質的な評価軸になっているのです。

実は評価されている“普通”な経験の共通点

就活の現場では、「目立つ経験」「すごい成果」ばかりが評価されているわけではありません。

むしろ、見た目は平凡でも、思考と行動に“らしさ”がにじみ出ている経験のほうが、面接官の印象に残りやすいのです。

ここでは、実際に評価されやすい“普通のガクチカ”に共通する3つの特徴を整理します。

①「やっていること」より「どう捉えていたか」に個性が出る

たとえば、「アルバイトで接客を頑張った」だけだと、印象に残りにくいかもしれません。

でも、その中で「なぜその仕事にこだわったのか」「どんな違和感があって改善に取り組んだのか」といった“問いの立て方”が語られていると、一気に話に深みが出ます。

経験の中で自分なりの意味を見つけ、行動してきた背景や意志が見えること。

これが、実は「なんとなくやっていた人」との大きな違いになります。

②「スケール」ではなく「構造」が整っている

企業がガクチカで見ているのは、プロジェクトの規模や成果そのものではありません。

注目しているのは、どれだけ“構造的に語れているか”という点です。

たとえば、

問題をどう発見したのか
誰とどう連携し、どんな工夫をしたのか
何が難しかったか、それをどう乗り越えたか
結果から何を学び、どう次に活かしたか

こうした一連の思考と行動の流れが整理されている話は、内容がシンプルでも面接官に伝わりやすく、「この人は考えて動ける」と評価されやすくなります。

③面接官が重視するのは「共感」と「再現性」

どんなにハイレベルな話であっても、「すごいけど、自分とは違う世界の人だな」と思われると、距離感が生まれてしまいます。

一方で、共感しやすい話――たとえば、「自分にもありそうな困難をどう乗り越えたか」「地道に続けて得た気づき」などは、面接官にとって“人物像の解像度”を高めるヒントになります。

さらに、評価される学生には「この人は入社後も同じように考えて動けそうだな」と思わせる“再現性”があることも共通点です。

つまり、「この行動はたまたまじゃない」と納得させられる構造がある。

それが、特別な成果以上に響くポイントなのです。

すごくなくても伝わるガクチカの磨き方

「ガクチカって、特別な経験がないと書けないんじゃないか」

そう思ってしまうのは、“話す内容”ばかりに目を向けて、“話し方”を軽視している状態かもしれません。

実際には、どんな経験でも切り取り方と構造次第で“伝わる話”にすることができます。

ここでは、経験の派手さに頼らず、ガクチカを磨く方法を紹介します。

切り口を変えると“普通”の経験が一気に立ち上がる

同じ経験でも、どこに焦点を当てるかによって伝わる印象は大きく変わります。

たとえば、飲食バイトの話でも

「忙しい中で回していた」ことを強調すると“体力アピール”になる
「新人教育で教え方を工夫した」点を語れば“リーダーシップ”が伝わる
「オペレーションの改善提案をした」なら“課題解決力”になる

つまり、ガクチカは“体験談”ではなく“主張の構造”であるという視点が大切です。

自分の経験をどんな角度から語るか？という意識を持つだけで、話の解像度と印象は大きく変わってきます。

「行動＋背景＋価値観」の構造で語る

具体的には、以下のようなフレームを使って構造化するのが効果的です

背景／問題意識：なぜその活動に取り組んだのか？どんな課題があったのか？
行動と工夫：実際にどう動き、どんな工夫や判断をしたのか？
価値観の獲得：そこから何を学び、どんな考え方や強みにつながったのか？

この構造を意識することで、どんな経験でも「思考の流れ」と「成長のプロセス」が伝わり、ただの出来事が“自分を語る武器”に変わります。

他人と比べず“言語化の質”で勝負できる環境に身を置く

「派手なガクチカじゃないから落とされるのでは？」と感じたときは、その経験を見てくれる“環境”を変えることも一つの手段です。

たとえば、学生転職では学歴や肩書きだけでなく、エピソードの文脈や思考力に注目してスカウトが届く仕組みになっています。

“量産型のすごそうな話”ではなく、“ちゃんと考えて積み上げてきた人”を評価する企業と出会える設計です。

どれだけいい経験をしていても、それを正しく受け取ってくれる場がなければ、価値は伝わりません。

だからこそ、「話す内容を磨く」だけでなく、「届く相手を選ぶ」ことも、ガクチカ設計の大事な一部なのです。

まとめ｜ガクチカの強さは“話の中身”より“視点と構造”で決まる

就活が本格化するにつれ、「ガクチカがすごい人ばかりに見えて、自分が見劣りする」と感じる瞬間が増えてくるかもしれません。

でも、その感覚に押しつぶされる必要はありません。

他人のガクチカが“すごく”見えるのは、切り取られた情報の印象が強いだけであって、経験そのものの価値とは別の話です。

そして実際の選考現場では、派手な実績よりも“どのように考えたか” “どう行動し、意味づけたか”が評価されることのほうが圧倒的に多いのです。

特別なリーダー経験がなくても
起業や海外インターンに参加していなくても
一見“平凡”に見える活動であっても

それをどう捉え、どう言語化し、どう語るかによって、その経験は“あなたらしさ”を伝える武器になります。

だからこそ、「自分はすごくない」と思ってしまったときこそ、

「自分はどう考え、何を大切にして行動してきたか」を言葉にしてみてください。

経験を“語れる形”に整える力こそが、ガクチカの本質的な強さです。